献血で老化防止?

僕は皆さんご存知のとおりの血液のヘビードナーだが、過去には鉄欠乏性貧血になったり(http://www15.plala.or.jp/k-kobayashi/diary0308.html2003年8月頃の日記参照)したこともあり、成分献血・全血献血あわせて年20回も行ってていいものなのかな?と思わなくもない。しかし、今日はそんな迷いを吹き飛ばすようなニュースを見つけた。

◆ 2005.9.8 頻回の献血は血管機能を高め、酸化ストレスを減らす――米国の研究
 鉄は酸化ストレスと深く関わっている。1980年代から、献血によって体内に蓄積されている鉄を減らせば、冠動脈疾患リスクは低下するのではないかと考えられてきた。が、頻回献血による慢性的な影響を調べた研究はなかった。米Yale 大学のHaoyi Zheng氏らは、2年間の献血回数が8回以上の人と1〜2回の人を比較し、頻回献血は血管弾力性の向上と酸化ストレスの低下をもたらすことを示した。詳細は、Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology誌2005年8月号に報告された。
 鉄は、強力な酸化作用を持つヒドロキシラジカルの生成を触媒する。動物モデルやヒト細胞を使った実験で、鉄がアテローム動脈硬化の進行を加速することも示されている。また、鉄キレート剤を使って、短期的に鉄の利用を制限した臨床試験では、血管内皮の機能改善が見られた。しかし、長期的な貯蔵鉄減少の影響を調べた研究はなかった。そこで著者たちは、献血頻度の体内鉄量への影響と、動脈硬化の進行に関係する血管の機能を表すマーカーの変化を評価した。
 研究グループは、頻回献血者(過去2年間に8回以上)40人(平均年齢61歳)と、低頻度献血者(過去2年間に1-2回)42人(平均年齢58歳)を米国赤十字Connecticut支部献血者記録から無作為に選出した。頻回献血者は過去10年間に35±2回献血しており、低頻度献血者は5±0.4回と、明らかな差があった。
 献血から少なくとも4週経過した時点で、12時間の絶食後に検査を実施した。上腕動脈の血流増加に依存した血管拡張反応であるFlow-Mediated Dilation(FMD)を超音波検査により測定、体内鉄貯蔵量を示す血清フェリチン値、血管の炎症と酸化ストレスのマーカー、心疾患リスクなどを評価した。
 血清フェリチン値は、頻回献血群の方が有意に低かった(中央値は17ng/mLと52ng/mL、P<0.001)。12ng/mL未満とかなりの低値を示した人が、頻回献血群に17人、低頻度献血群には2人いた。ヘモグロビンとヘマトクリット値に有意差はなかった。頻回献血群で、平均血球体積(MCV)は有意に低く、赤血球分布幅(RDW)は有意に高かった。
 FMDは、頻回献血群で有意に高かった(単変量解析で5.5±2.6%と3.8±1.6%、P=0.0003)。心疾患リスクその他の交絡因子で調整した多変量解析を行っても有意差は認められた。これは血管の弾力性が向上していることを意味する。両群の間で、血管の炎症を示す血清バイオマーカーには差はなかったが、酸化ストレスのマーカーである3-ニトロチロシンは、頻回献血群で有意に低かった(35nmol/mLと43nmol/mL、P=0.02)。
 頻回献血は、体内の鉄の貯蔵を有意に減らす。また、血管の弾力性を高め、酸化ストレスを減らす。したがって、献血により、加齢による血管機能の衰えを予防できる可能性がある。献血への積極的な参加を呼びかけるために、格好のデータが提供されたと言えそうだ。
 本論文の原題は「Iron Stores and Vascular Function in Voluntary Blood Donors」、概要は、こちらhttp://atvb.ahajournals.org/cgi/content/abstract/25/8/1577で閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)
血清フェリチンは体内貯蔵鉄量の指標なわけで、これが少ないほうがよいならば、常に貧血気味の方がよいこともあるということなのだろうか?女性の方が長生きであることにも関係している?まさかね…(^^;)